PASTA CHAMPIONSHIP ASIA 2024
大会概要
「PASTA CHAMPIONSHIP」はパスタ界のワールドカップとも称されており、イタリア食文化の継承を目的に、世界中のイタリアンシェフの育成に注力し、シェフたちが世界の檜舞台で活躍するための登竜門となる大会です。「PASTA CHAMPIONSHIP ASIA 2024 JAPAN」」(以下、日本大会)では6名のイタリアンシェフが参加し、順番にパスタのプレゼンテーション、試食等の厳正なる審査を行った結果、福岡「FUCHIGAMI」の渕上誠剛(ふちがみ・せいご)シェフが優勝、日本代表シェフとして選定されました。更に渕上シェフは 、10月にフィリピン・マニラで開催された「PASTA CHAMPIONSHIP ASIA 2024(以下、アジア大会)」に出場し、日本、マレーシア、シンガポールなどアジア8ケ国の予選を勝ち抜いたシェフと腕を競い、見事優勝を勝ち取りました。
日程
2024年 7月7日(日)
参加シェフ

(左から)
- 石井良幸(いしい・よしゆき)シェフ / Trattoria TESORINO rosso
- 岡島大輝(おかじま・たいき)シェフ / JW Marriotto Hotel Nara
- 寺田昂将(てらだ・たかまさ)シェフ / La Scogliera
- 渡邉陽介(わたなべ・ようすけ)シェフ / SATS TFK
- 渕上誠剛(ふちがみ・せいご)シェフ / FUCHIGAMI
- 鈴木裕士(すずき・ゆうじ)シェフ / 串羊
競技内容
各シェフ順番に調理、盛り付けを行い、審査員にプレゼンテーションを実施。
- 調理及び盛り付けを行う時間(45分間)
- 審査員へのプレゼンテーション(10分間)
採点基準
以下5つの評価基準および配点を基に、調理プロセスとプレゼンテーションで評価を決定しました。
① 【準備工程】10点
調理の準備及び片付け、制限時間の遵守、適切な調理過程、衛生管理。
② 【技術】15点
食材の保管、調理等の正しい取り扱いに加えて、効果的に素材を活かせているか。
③ 【見栄え】15点
味覚を刺激し、美的で優雅な色彩の調和。
④ 【パスタの茹で具合】20点
パスタの調理時間及び、適切な提供温度。
⑤ 【味付け】40点
食材が持つ風味と調和した味付け、調味料等の正しい使用。
石井良幸シェフ
作品名
「SPAGHETTI SEAFOOD SAUCE」




岡島大輝シェフ
作品名
「SUMMER OF JAPANESE MEDITERRANEAN STYLE
SPAGHETTI AGLIO, OLIO E PEPERONCINO」




寺田昂将シェフ
作品名
「SPAGHETTI AI LATTUME CON TREVIZO」




渡邉陽介シェフ
作品名
「SPAGHETTI AL PROFUMI DELL AUTUNNO」




鈴木裕士シェフ
作品名
「PENNE WITH LAMB SALSICCIA」




渕上誠剛シェフ
作品名
「SUBLIMATION OF CLIMATE」









優勝者
PASTA CHAMPIONSHIP ASIA 2024 JAPAN
優勝者は渕上誠剛シェフ


渕上誠剛シェフ プロフィール
17歳で料理業界に入り、2003年に27歳で独立。2013年イタリア・トスカーナにてイタリアワインソムリエ取得。2015年「ミラノ万博」イデンティタゴローゼにてイル・ギオットーネ笹島シェフのアシスタントとしてダビデ・オルダーニとのコラボレーションに参加。またクラウディオ・サドレルと笹島シェフのコラボレーションディナーのアシスタントとしても参加。2015年9月、「Da fuchigami」オープン。中洲に移転して「DA FUCHIGAMI HAKATA」とリニューアル。コロナ禍を経て「FUCHIGAMI」として再スタートを切る。

優勝者・渕上誠剛シェフ
レシピ試食会・取材会レポート

「PASTA CHAMPIONSHIP ASIA 2024 JAPAN」で見事優勝を手にした渕上誠剛シェフのレシピ試食会・取材会を開催いたしました。
レシピ試食会・取材会では、まず優勝パスタ「Sublimation of Climate(風土の昇華)」が参加者に振る舞われ、優勝パスタをご試食いただきました。その後、渕上シェフのパスタ考案の背景や熱い想いをお話しいただくトークセッションを行いました。

渕上シェフのパスタは植物由来の材料だけで作られていますが、植物性の材料だけだとどうしても味に深みが出にくいため、さまざまな工夫を重ねていると話します。
「植物由来の材料それぞれの味わいを引き出して重ねていくことで、全体の味のバランスを取っています。乾燥させたごぼうで、クリスピーな食感と深い味わい、トマトもオーブンで焼いて旨みを引き出しました。また豆乳クリームから抽出したプロテインを藁でいぶしたもので、香りによって味に深みを加えます。他にも国産のヤマブシタケ、たもぎだけなどを使ってさらに旨味を追加します。」
さらに渕上シェフは、「これからはイタリア料理を通して得たもののすばらしさを、料理人の後輩たちに伝えていきたい。これまでトライしてきたことが認められたときの喜び、試行錯誤がうまくいったときの小さな喜び、これらが乗じて大きな喜びとなる素晴らしい仕事だということを伝えたいですね。」とイタリア料理全体の未来についても考えられていました。
日本大会で優勝した渕上シェフは、2024年10月にフィリピンのマニラで開催されるアジア大会へと駒を進めます。最後に渕上シェフは日本代表として次のアジア大会への出場に向けて「日本にイタリアから本場のイタリア料理を伝えた先輩たちが築いた礎の上に立つ1人として、さらに料理をブラッシュアップして臨みたいです。」と意気込みを語りました。
アジア・パスタ・チャンピオンシップ決勝結果レポート

アジア大会は世界中にパスタの魅力を発信するWorld Pasta Dayの2024年10月25日にフィリピンのマニラで実施され、日本代表の福岡「FUCHIGAMI」渕上誠剛シェ フが見事優勝、パスタ・アジア・チャンピオンに輝きました。会場となった料理学校「De La Salle - College of Saint Benilde」にはこの日朝早くから日本、マレーシア、シンガポールなどアジア8ケ国の予選を勝ち抜いたシェフが集い自慢のパスタを披露しました。その中でも渕上シェフの「Sublimation of Climate(風土の昇華)」は日本での決勝同様非常に高い評価を集め、満場一致で1位に選ばれました。8名の決勝進出シェフはいずれも自国の料理文化をイタリア料理に反映させ、いずれも甲乙つけ難いパスタを披露したことが評価され、本来ならば上位3名のみがイタリア研修に参加予定でしたが、表彰式ではサプライズがあり、今回決勝に進出した8名のシェフ全員が参加できることになったのです。今回のコンテストは今後アジアにおけるイタリア料理文化の底上げにつながるだけでなく、パスタの新たな可能性を示唆する非常に有意義なコンテストとして幕を閉じました。
Text / Masakatsu Ikeda ( Italian Week 100 Director, Journalist )